クローン病肛門病変について
診断
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診断
クローン病では肛門の病変が先行することも多く、クローン病を早期に発見するためにも肛門病変の診断は重要です。
肛門病変の診断は、問診、視診、触診、直腸指診、肛門鏡検査の順で行います1)。
問診
症状について発症の時期、腹部症状(下痢、腹痛など)との関連、治療歴がある場合は治療歴なども聴取します。
視診
肛門周辺だけではなく、会陰部、臀部、仙骨部など広範囲に、皮膚の色調、湿潤、びらん、膿汁、膨隆、瘻孔、皮垂、脱出病巣、手術痕などを観察します。
触診
肛門周囲の硬化、病変部の圧痛、硬結、瘻管などを確認します。直腸指診は左側臥位で行うのが一般的で、通常、人さし指を用います。肛門狭窄や潰瘍で強い痛みが想定される場合は麻酔科での診察も考慮します。
直腸指診
圧痛、狭窄の有無、肛門括約筋の緊張状態、ポリープや潰瘍病変、硬結、瘻管などを確認します。
肛門鏡検査
下部内視鏡スコープではわかりにくい肛門管の詳細を確認するための検査です。下部直腸まで観察可能で、下部直腸の便、出血、粘液、膿汁、粘膜などの状態を確認し、さらに歯状線近傍の病変の観察を行います。
クローン病の診断基準(表1)2)には、特徴的な肛門病変として裂肛、Cavitating Ulcer、痔瘻、肛門周囲膿瘍、浮腫状皮垂などが挙げられていますが、これ以外でも創治癒遷延など術後経過が不良な場合はクローン病を疑い観察します。
診断にあたってはMRI、CT、経肛門的超音波検査といった画像検査も有用です。また、大腸内視鏡検査は治療方針にも関係する直腸病変の活動性を把握することができるため、必須の検査です。
クローン病肛門病変の代表的な分類法として、Hughesらの分類があります(表2)1)。Hughesらの分類はクローン病の肛門病変を、肛門にクローン病そのものの病変が生じるPrimary lesion(原発巣)、Primary lesionを引き金として機械的、物理的、感染性合併症として続発するSecondary lesion(続発性難治性病変)、クローン病とは関係なく発生するIncidental lesion(通常型病変)に分類しています。Hughesらの分類はクローン病肛門病変の外科手術を選択する際の基準として用いられています。
表1.クローン病診断基準としての肛門病変
令和5年度 改訂版(令和6年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針〔厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書〕, 32-35, 2024.
表2.クローン病の肛門病変:Hughesらの分類
Hughesらの分類(クローン病診療ガイドラインの表現を括弧内に示す)
クローン病肛門部病変のすべて -診断から治療まで-(第二版)
「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班)平成30年度分担研究報告書別冊, 7, 2019.
1)クローン病肛門部病変のすべて -診断から治療まで-(第二版)
「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班)平成30年度分担研究報告書別冊, 1-2, 7, 2019.
2)令和5年度 改訂版(令和6年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針〔厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書〕, 32-35, 2024.