クローン病肛門病変について
治療の概要
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治療の概要
『クローン病治療指針(2024年3月改訂)』では、クローン病肛門病変診療フローチャートが示されています(図1)1)。内科的治療による腸管病変の寛解導入に努めるとともに、肛門病変は外科医・肛門科医と連携し個々の患者の病態に応じて治療を選択する、とされています1)。
『クローン病肛門病変に対する治療指針(2024年1月改訂)』では、クローン病肛門病変の治療に対する一般的事項として、クローン病の肛門病変は再発を繰り返し難治化するため、長期的にQOLを維持する管理が重要となること、治療に際しては、病変局所だけでなく腸病変、特に大腸病変の活動性を評価し、治療法を決定すること、長期経過例に対しては臨床症状の変化に留意し、癌を疑う場合には積極的に検査を行うことなどが記載されています(表1)1)。
また、病態別の治療指針が示されており軽症の痔瘻病変の場合、切開排膿とともにメトロニダゾールや抗菌薬の投与を行います。中等症以上の症例や複雑多発例では、症状の軽減とQOLの改善を目的としてシートンドレナージを選択します。また、腸病変の活動性が高く、免疫調節剤や生物学的製剤を導入する場合はドレナージによって局所の感染巣を制御した後に開始します。日常生活を制限するほどの重症例で他の治療法で改善が認められない場合は、人工肛門造設術を検討します(表2)1) 。
日本大腸肛門病学会の『肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版(改訂第2版)』では、クローン病合併痔瘻・肛門周囲膿瘍治療がフローチャートにまとめられています(図2)2)。
クローン病の痔瘻に対して、「浅い」「単独」の瘻孔であれば lay open(切開開放術)などを考慮することもありますが、治療は基本的にシートンドレナージを行います。
シートンドレナージ等でも再発・再燃、治癒遅延、複雑化する場合には、持続シートンドレナージにより経過観察します。この場合、直腸病変があれば生物学的製剤を併用されるケースもあります。
持続シートンドレナージによっても、日常生活を制限する直腸肛門部の症状を制御できない場合には、人工肛門造設術が考慮されます。
図1.クローン病治療指針(2024年3月改訂)
クローン病肛門病変診療フローチャート
令和5年度 改訂版(令和6年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針〔厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書〕, 36-44, 2024.
表1.クローン病肛門病変に対する治療指針(2024年1月改訂)
一般的事項、診断的事項
令和5年度 改訂版(令和6年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針〔厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書〕, 48-49, 2024.
表2.クローン病肛門病変に対する治療指針(2024年1月改訂)
クローン病肛門病変治療指針
令和5年度 改訂版(令和6年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針〔厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書〕, 48-49, 2024.
図2.肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診断ガイドライン 2020年版(改訂第2版)
クローン病合併痔瘻・肛門周囲膿瘍治療のフローチャート
肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン 2020年版(改訂第2版), 南江堂, 45, 2020.
1)令和5年度 改訂版(令和6年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針〔厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書〕, 36-44, 48-49, 2024.
2)肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン 2020年版(改訂第2版), 南江堂, 45, 2020.